1−11.冬の山
私はJR茅野駅から新宿に向かう普通列車の窓から、キノコ状の灰色の雲に覆われ、
なだらかな裾野だけが見える八ヶ岳をを眺めている。
裾野だけだと、あの富士山のように見える。
昨日は荒れる赤岳の山頂で、やめようと決心した冬山なのに、
もう麻薬のように次の 快晴の雪山の夢のプランが沸いてくる
赤岳の山頂付近は吹雪いていた。
私の10m前を頂上にアタックする、数名の者たちも 吹雪の中に消えた。
山頂までつづく凍った岩、吹雪で下はみえないが両側に切り立った鋭い冬山の稜線に
一人で怯えている。
一歩誤れば、確実にやってくる死・・・理屈で考えなくても、私の体が十分に理解している
もうやめよう。何故こんな恐ろしいところへ一人できてしまったんだ。
冬だけでなく、夏山ももうやめよう。 だから神様・・今回だけは許して下さい。
やめなければ、君は確実に死ぬだろう
冬山をやる人は身近な人がポツリ・ポツリと確実に消えていく
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