1−7.月夜の八ヶ岳
1974年1月
おおーい おおーい ・・・知り合ったばかりの 私たち3人は八ヶ岳の行者小屋で叫んでいる。
小屋からは月明りで、赤岳から横岳の絶壁が眼前に照らし出され、不気味に迫っている。
大雪も荒々しい岸壁にはとどまることができず、凍った岩肌があらわだ。
100人以上宿泊できる小屋は私と高校生そして小屋の管理のバイトらしき学生の3人だけだ。
その高校生は昼横岳の山頂付近で会たときは2人連れで元気に雪を楽しんでいた。
その連れが滑落して、今は一人だけになってしまった。
でもいくら大声で叫んでも月夜の八ヶ岳から返事はなかった。
翌日、ソリをひく救援隊とすれ違った。
ソリの中には、2つ折りにされた遺体が入っているという
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